奢り(おごり)を防ぐ「陰徳善事」...初代中井源左衛門(号、良祐)

蒲生郡日野の初代中井源左衛門が、文化2年(1805年)正月、90歳のときにまとめた「金持商人一枚起請文」は、浄土宗を開いた法然の一枚起請文にならって富豪の秘訣を子孫に残した遺言である。

「金持商人一枚起請文」もろもろの人々沙汰(さた・論じる)し申さるゝハ、金溜る(たまる)人を運のある、我は運のなき抔(など)と申ハ、偶にして大いなる誤なり、運と申事ハ候はず、金持にならんと思はゞ、酒宴遊興奢(おごり)を禁じ、長寿を心掛、始末第一に、商売を励むより外に仔細は候はず、此外に貧欲を思はゞ先祖憐みにはづれ、天理にもれ候べし、始末と吝(しわ)きの違あり、無智の輩ハ同事とも思ふべきか、吝(りん)光りは消えうせぬ、始末の光明満ぬれば、十万億土を照すべし、かく心得て行ひなせる身には、五万十万の金の出来るハ疑ひなし、只運と申事の候て、国の長者とも呼るゝ事ハ、一代にては成かたし、二代三代もつゞいて善人の生れ出る也、それを祈候には、陰徳善事をなさんより全別儀(まったくべつぎ)候はず、滅後の子孫の奢り(おごり)を防(ふせが)んため、愚老の所在を書記畢(かきしるしおわんぬ)
文化ニ丑正月 中井良祐  識

金持ちを運のある人、自分は運がないと言う人がいるが、大きな間違いである。

金持ちになりたいと思えば、酒、遊興など、奢ったことを止めて長寿を心がけ質素倹約を第一に、商売を励むよりほかに方法がない。これ以上に貧欲を思うと、先祖の助けもなく天の道理にも外れる。

始末(質素倹約)とケチの違いがあるが、無知の連中は同じことと思うであろう。

ケチで貯めた財産は光がなく、すぐに消えてしまう。

一方、質素倹約を続けると広大な未来が開ける。このように心得て行動する人には、五万十万のお金持ちになることは疑いない。

しかし、国を代表するような大金持ちになることは、一代では難しく、二代三代も続いて善人の子孫が生まれ出ることが必要である。

それを願い祈るには、陰徳善事(人に隠れた良いこと・よい行い)を続けながら、子孫に善人を得るように祈るよりほかに方法はない。............子孫の奢りを防ぐため、自分の思うところを書き記した。

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