「はでな行動で人目をひくような見栄を張った商売は一切無用」 近江商人:山中兵右衛門

山中兵右衛門家は、享保3年(1718年)に駿河国御厨郡御殿場に店舗「日野屋」を構え、駿州、相州、豆州に店を拡大し、御殿場地方の一大商家に成長した近江日野商人である。
食料品から小間物・日用品を、万屋(よろずや)的商法でわずかな利益を積み重ねていった。初代は、寛保年間(1741~43)に人手に渡った居宅を買い戻し、延享2年(1745年)に家督を長男の二代目に譲って隠居した。没年は安永3年(1774年)、享年90歳。
二代目山中兵右衛門は、享保10年(1725年)に生まれた。 御殿場は隆盛となり、近隣の村々と卸・小売方法をめぐって争いを惹き起こすほどに成長。没年は文化2年(1805年)81歳。二代目は、10カ条からなる家訓「慎」を制定した。

二代目 山中兵右衛門 家憲「慎」 享和2年(1802年)一、惣(そう)年(とし)寄(より)役(やく)続けて仰(おお)せ付け為(な)れ候はば御上様の役儀の外に相用い申さざる様に平(へい)生(ぜい)慎み  第一の事
  附(つけた)り陰徳に相障り候事を考え弁之これあるべき事
一、仏事等大切に相(あいつと)勤(きん)め申すべき事
一、惣(そう)じて不(ふ)実(じつ)ヶ間敷事相慎み申すべき事
一、店仕入れ方諸代呂物(しろもの)何によらず吟味を遂(と)げ慥(たし)か成る宜敷代呂物を仕入れ売り捌(さば)き申すべき事
  附り不正粗末の品を取り扱い申す間敷事並びに高利を望む事無用也
一、御得意方へ諸代呂物(しろもの)何事によらず実儀第一の事
一、小さき御得意衆還って大切に致すべき事
一、伊達(だて)ヶ間敷商内(ましきあきない)一切無用の事
  附り商売随分内(うち)場(ば)に致すべき事
一、帳(ちよう)合(あい)指(さし)金(がね)物(ぶつ)並びに思い入れ商内訳(わけ)て無用の事
一、商売替無用の事
一、奉公人へ憐れみを申すべき事
  附り実(じつ)体(てい)に相勤め候者へは気を附け遣(つかわ)し申すべき事
右の通り相守り申すべき事        以上
享和二年
  壬戍春     光栄    行年七十八書

一、このたび、重ねて惣年寄役をおおせつかったが、役儀の他にお上のご威光をカサに一般町民に相対することがないよう、日頃からつつしみを第一とすること。
一、法事などのことは、大切に勤めること。
一、すべて、不誠実な行為を慎むこと。
一、店で仕入れる諸商品はどんなものでも十分に吟味して、確実で優良な商品を仕入れて販売すること。さらに、不正な商品、粗悪品を扱ってはならぬ。また、高利を望んではならない。
一、お得意様に対しては、諸商品の納入やその他、何事によらず誠実第一を心がけること。
一、小口のお得意様をかえって大切にすること。
一、見栄を張ったような外見の派手な商売は、一切してはならない。
  さらに、商売は万事につけて控えめ(堅実な商い)にすること。
一、米相場の操作など物価変動を見越して実物の受け渡しをしないで決済したり、思惑による投機取引は無用とすること。
一、商売替えをしないこと。
一、従業員には温情をかけ、誠実に勤めた人には十分な配慮をすること。
享和二年(1802年)

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