「先義後利栄  好富施其徳」

「先義後利栄」とは、商売を行うには人の行うべき正しい道(道理)をわきまえた行動をしていれば、利益は後から付いてくる。
目先の利益より遠い先を見越して商いをすれば栄えるという意味である。さらに「好富施其徳」と続き、その得た富に見合った「徳」を施しなさいと諭している。
近江商人:西川庄六家 家訓

2011.3.11東日本大震災があって、その後なにか喪失感が漂い、さらに不確実な世の中となっている感がある。このような時代においても、なお売上成果を追求するために、やたら(不必要なくらい)事業規模の拡大を重視する経営も数多く存在する。規模の拡大そのものは否定しないが、急激な拡大志向は新たな問題点を生み出すことが懸念される。

ある経営者は、「もっと会社を大きく、それも素早く大きな規模と売上増を目指さないと生き残れないし、顧客サービスだって十分にできない。だから、今は売上目標を目標時期までに全力をあげて達成できるよう頑張らないといけない」とおっしゃったことをよく覚えている。私は、「量に目がくらんで質を妥協する経営には未来はない」と信ずる経営者である。

いつになったら、顧客サービス・従業員サービスを提供できるのだろうか?規模が大きくならないと十分な顧客サービスができないのだろうか?つい、そう思ってしまう。

顧客サービスが売上・利益増よりも後回し、という経営者の考え方が非常に気になった。
売上目標を達成できたとしても、すぐに、さらなる売上目標設定を優先していくであろうことは、容易に想像がつく。

拡大志向をいったん立ち止まって顧客サービス重視を展開するには非常に勇気のいる経営判断を要する。それは、目先の成果ではなく長期視点を要求されるからである。また一定の売上目標が達成できると、さらなる増収に向けて利害関係者の周辺からさまざまな誘惑を背負い込むことにもなる。

売り手の規模の拡大志向が、買い手である消費者(顧客)にとって、公正な情報開示や立場がきちんと守られ、結果として顧客満足となっているだろうか?売り手だけが満足して、消費者不在となっていないだろうか?
さらに、売り手と買い手が利して、それが世間(社会)にとっても利するような「三方よし」となっているだろうか?まことに危ういことである。

このような時代こそ、先人たちの生き方に学ぶことも大切なことである。そこで、江戸中期から現在に至るまで、全国規模で商業活動を展開していった近江商人の経営について注目することにした。

昔も、自然災害や身分制度、政治事情など、数多くの経営を阻害する要因があったであろう。そんな厳しい社会環境の中から、地道かつ着実に成果を上げ、人材育成や事業の永続性を維持することのできた近江商人の経営とはいったい何であろうか?商売のあり方・原点・極意を振り返って確かめてみようと思う。

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